北口雅章法律事務所

弁護士のブログBlog

「幽霊が出た!」 と聞いて信じられますか?

私は,超常現象(オカルト現象),「霊」現象の類は基本的には信じない。
少なくとも,私自身はその直接経験がない。

が,昔,父から「ある話」を聞き,
こっ,これは,ひょっとして,「幽霊」は存在するかもしれない!!?
と思ったことがある。

「父の思い出話」として,忘れないうちにブログに書いておこう。

 

当時(昭和55年ころ),父は,愛知県警・犬山署の署長だった。

父の所管内には犬山城があり,その横を木曽川が流れるが,
ある日,「木曽川の禁漁区域」で,鮎釣りをしていた極道(暴力団組員)が,
「(幽霊が)出た~!!」 と血相を変えて,
警察署に駆け込んできたことがあった,というのだ。

と,その翌日か,翌々日だったか,まもなくの時期,
その極道が「幽霊を見た」という地点から,数キロ離れた下流で,
女性の水死体が発見された。

 

犬山警察署員の聞き込み調査等の結果,
「事件」の背景に,

「司法試験受験生の悲しい物語」があることが判明した。

父が,部下から報告を受けた内容の要旨は,次のとおりだ。

 

当時(今から30年以上も前),私は,未だ大学入学前の時期であったが,
もちろん,当時の司法試験は,無茶苦茶,難しかった。

地元(犬山市)出身のある青年A君は,地元でも有名な秀才であったが,
「青雲の志」をもって,東京都内にある,著名な私立大学法学部に進学し,
司法試験に挑んだ。ところが,A君は,何度うけても,司法試験に合格しなかった。

おそらく10年は頑張ったと思われるが,A君も諦めるときが来たようだ。

失意のA君は,当時交際していた「S(彼女)」を連れて,
郷里の犬山に戻り,両親とともに暮らすようになった。
ところが,両親は,「S(彼女)」のことを許さなかった。
自分たちの「自慢の息子」を「ダメ男」にしたのは,
「他ならぬ,S(彼女)のせいだ!!」といって,日々,陰湿にSを責め立てた。

 

かくて,Sは,木曽川の堤防上から,「靴」を脱いで,投身自殺した。
その当時,A君の通報により,Sが投身自殺したみられる

残された「靴の位置」周辺の木曽川流域を,

犬山警察署員らがくまなく捜索したが,Sの遺体を発見できなかった。

 

ところが,その数ヶ月後(?)
上記のとおり「Sの遺体」が木曽川の下流域で発見された日に先立ち,
上記極道(暴力団組員)が,「Sの幽霊」と思われる「女性の幽霊」を見た場所は,
正に,Sが履いていた靴が発見された場所と一致していた,というのだ。

 

あの時代,警察を恐れるべき立場にあった極道(暴力団組員)が,
自らの立場を,はからずも忘失してしまい(!),
つまり,「禁漁区での鮎釣り」という
愛知県漁業調整規則違反を「警察に自白」することなる(!)ことを顧みず,

「我を忘れて」文字通り「無我夢中」で警察署に駆け込んで,
 「(女性の)幽霊を見た!」と述べたという,極道(暴力団組員)の供述は,

当該「自己に不利益な」供述をするに至った動機,上記供述状況,
「幽霊の発見場所」と「自殺場所」との整合性
「幽霊の発見時期」と「遺体の発見時期」との先後関係・時期的近接性に照らし,
信用性の程度は極めて高いというべきではなかろうか。